「原価率30%」に縛られない、納得感のある価格の決め方
ここまで、「1g単位の原価」と「時間単価」の考え方についてお伝えしてきました。 これらが見えてくると、最後に必ずぶつかる疑問があります。


それは、

「結局、いくらで売ればいいの?」
という問題です。
お菓子の世界ではよく「原価率は30%が理想」と言われます。
でも、小さなアトリエや個人の現場では、この数字を絶対のルールにしてしまうと、少し苦しくなってしまうことも……。
今回は、常識に縛られすぎない「長く続けられる価格の決め方」を整理していきましょう。
1. 「原価率30%」は絶対のルールではない
まず知っておいてほしいのは、原価率30%はあくまで「目安のひとつ」だということです。
【そもそも原価率とは?】 販売価格のうち、材料費が占める割合のことです。
- 例:原価 300円 / 販売価格 1,000円 = 原価率 30% (ここには材料費だけでなく、箱やリボンなどの資材費も含みます)
もちろん一つの基準にはなりますが、これに囚われすぎて自分の技術料を削ってしまっては本末転倒です。
2. 小さなアトリエほど「30%」が難しい理由
なぜ、個人や小規模な現場では30%という数字が重く感じるのでしょうか。
- 理由①:仕入れの規模が違う 大きな店舗なら「大量仕入れ」で1gあたりの単価を下げられますが、こだわりの材料を少量ずつ使うアトリエでは、どうしても原価は高くなりがちです。
- 理由②:時間の比重が大きい ボンボンショコラや飴細工など、技術が必要なものほど「材料費」よりも「作る時間(技術)」に価値があります。材料費だけで価格を決めるのは、あなたの技術をゼロ円で見積もるのと同じになってしまいます。
3. 現実的な価格の決め方(3つのステップ)
迷ったときは、次の順番で数字を積み上げてみましょう。
- STEP①:材料+資材の原価を出す まずは1g単位まで計算した材料費と、パッケージ代を合計します。これがすべての土台です。
- STEP②:時間の原価を足す 前回の記事で出した「時間単価」を当てはめます。 (例:1時間で作れる量から、商品1個あたりの人件費を算出する)
- STEP③:少しの「余裕」を持たせる 設備の修理代や、新しいお菓子を研究するための費用など、お店を続けていくための「余白」をプラスします。
この「材料 + 時間 + 余裕 = 販売価格」という考え方が、あなたを守る盾になります。
4. 「高いかも…」と不安になったら
自分で決めた価格を見て、「ちょっと高いかな?」と不安になるのはとても自然なことです。でも、そんな時はこう考えてみてください。
その価格は「高い」のではなく「適正」なのです。
しっかり原価と時間を計算して出した数字なら、それは「あなたがそのお菓子を作り続けるために必要な理由のある価格」です。
無理をして安くすることは、長くお菓子を作り続ける道を自ら閉ざしてしまうことにもつながりかねません。
5. 「安さ」以外で選ばれる工夫を
もし価格に不安を感じるなら、「安くする」以外の方法で価値を伝えてみましょう。
- 作っている風景やこだわりをSNSで伝える
- 材料のストーリー(どこのどんな素材か)を紹介する
- 季節感や特別なパッケージで「今、ここで買う理由」を作る
お客様は「安さ」だけを求めているわけではありません。あなたの技術や想いという「価格の理由」が伝われば、納得して喜んで手に取ってくださる方は必ずいます。
まとめ:原価・時間・価格はすべてつながっている
- 1g単位の原価を正確に知る
- 自分の時間の価値(時間単価)を知る
- それらを元に、続けられる価格を決める
この3つが揃って初めて、心が安定し、お菓子作りに集中できる環境が整います。
価格は一度決めたら終わりではありません。
見せ方を工夫したり、少しずつ調整したりしながら、ゆっくりと「あなたのブランドの価格」を育てていけば大丈夫です。

無理なく、楽しみながらお菓子を作り続けていくために。 まずは一番身近な商品から、数字と向き合ってみませんか?




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